以下は、骨盤臓器脱の医療機関での治療法についての一般的な情報です。
治療方法の判断は、医療機関を受診し、医師の診断に基づいて決めることをおすすめします。

軽症(POP-stageⅠ)の場合

下垂による不快感があっても、日常生活に支障が無い程度の場合には、

  • 生活指導
    体重(腹部の脂肪)を減らす、便秘解消、重労働を避ける
  • 骨盤底筋訓練(体操)
    膣・尿道・肛門を締める運動を毎日一定回数行うものです。
    2~3か月継続すると、軽症の骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁の症状の改善が期待できます。
    ➡詳細は、「筋肉を鍛えましょう!」のページをご確認ください。

が治療として行われ、腹圧性尿失禁に効果があるとされています。
これらは、中~重症の場合にも症状の悪化を防ぐのに有効という報告があります。

※参照・参考文献
2018年3月、亀田グループポータル 医療ポータルサイト、「骨盤臓器脱(性器脱)」、http://www.kameda.com/patient/topic/genital/index.html

中~重症(POP-stageⅡ~)の場合

下垂症状が日常生活に支障をきたす場合には

  • ペッサリー治療
    直径5~8.5㎝程度のプラスチックのリング状装具を膣内に入れて、脱をもとの位置に戻して症状を緩和する方法。膣内の炎症を防ぐため、1~3ヵ月毎に通院・検査・投薬が一般的ですが、基本的には朝晩の自己着脱が望ましいとされます。感染症のリスクが高い場合や、尿失禁の悪化・自然脱出・出血を起こす場合は、他の治療法を選択します。
    詳細は、「医療機器の種類」のページや、各販売会社の表示をご確認ください。
  • 手術療法
    骨盤臓器脱の唯一の根治手段とされています。
    膣から子宮を摘出し、弛緩した膣壁を部分的に切除して縫い縮める方法(膣式子宮全摘術+前後膣壁形成術)などが多くの施設で行われています。現在は、合成繊維でできたメッシュを入れて補強する方法(TVM手術・LSC手術など)も行われています。
    手術療法には、患者様の持病や年齢、子宮を残すか、性交機能を残すか、人工物であるメッシュを使うかどうかなど多数の選択肢があります。信頼できる専門医に相談して慎重に決めましょう。

    ※参照・参考文献
    ・2018年3月、骨盤臓器脱(子宮脱)手術net、「骨盤臓器脱の手術 TVM手術とLSC手術」・「女性泌尿器科百科(8)骨盤臓器脱の手術療法その1」、http://gogourogyne.net/for/index.html
    ・2018年3月、亀田グループポータル 医療ポータルサイト、「骨盤臓器脱(性器脱)」、http://www.kameda.com/patient/topic/genital/index.html
    ・東京医科大学病院 産科・婦人科 主任教授 西 洋孝先生講演、第125回東京医科大学病院 市民公開講座 、「骨盤臓器脱(POP)の治療」

骨盤底サポーター(軽症~重症)

下着の上にはき、骨盤底筋を支えることで下垂した臓器を正常な位置に保持して症状を緩和する方法。膣内挿入部品が無いため特別な管理を必要としない。
重度の会陰体損傷が無い方であれば軽症~重症まで有効だが、効果は着用中のみで、外してしばらく放置すると再び下垂する。骨盤底筋訓練(体操)との併用が望ましい。
ペッサリーと同様の保存療法(手術に拠らない治療法)として2016年に学会発表された治療法であり、採用病院はまだ限られている。2019年にNHK「きょうの健康」でも骨盤底サポート下着として紹介された。
詳細は、「骨盤底サポーター」のページをご確認ください。
骨盤底サポーター治療について相談できる病院は「推奨医療機関」のページをご確認ください。


※このページは、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会発行の、「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2017」を参考に作成しました。